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ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

第597話【アマデウスての対決】

「ぐぅじょお~~……」


俺は寝そべりなから額を地面に押し付けていた。


腰を浮かせて額と爪先で身体を支える俺はへの字型になっている。


まさか俺がこんな無様な格好で苦悩する日が来るとは思っても見なかったぜ。


への字だよ……。


腹を打たれてくの字になったことは何度かあるけど、への字は初めてだわ~。


な、情けない……。


「セ、セルフヒ~ル……」


股間を両手で押さえる俺はセルフヒールを唱えた。


俺の股間でポワリと神秘色に魔法が輝くと、股間からズキズキする痛みが引いていく。


更に俺はヒールを二回ついかした。


「これで良し……」


俺は三度のヒール後に立ち上がる。


まだ、股間に違和感が残るので、片手で玉位置を直した。


ごそごそごそ。


「あれ……」


玉位置を直していて気が付いた。


初めて感じる違和感だ。


「何か可笑しいぞ……」


俺の額に嫌な汗が浮かぶ。


先ほど急所攻撃を繰り返された際に流した冷たい脂汗とは違って、かなり生暖かい汗だった。


俺はワサワサと両手を股間に当てて確認を繰り返した。


だが、間違いない……。


愕然……。


「あれれ、タマタマが足りなくない……」


足りない。


可笑しい。


数が足りないぞ。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ……」


確認だ。


再確認だ。


竿は一本確かにある。


袋もちゃんとある。


だが、中身に鶉型のボールが一つ足りない。


「玉が、一個たりねぇぞぉ……」


驚愕に寒気が走る。


「ど、どうしよう……。何処かに落としちゃったかな……」


俺が顔面蒼白で落ち込んでいるとアマデウスが言った。


「玉がつぶれたままヒールを施したから、玉が潰れたまま回復したのだろうさ」


「えっ、なに、どう言うことですかっ!?」


「それがヒールってものだ」


「ちょっとよく分からないから、詳しく説明してくれよ!!」


「何故に私が……?」


俺はジャンプしてから膝から着地すると土下座をして頭を下げた。


再び額を地面に付ける。


「おねげ~しますだ、アマデウスさん。無知なワシに詳しく分かりやすく説明願いますだべさ
!!」


「いや、まあ、そのぐらいの説明ならば……。ごっほん……」


アマデウスは一つ咳払いをしたあとに説明をしてくれた。


「ヒールって魔法は傷を癒す魔法だが、性質敵には対象の蘇生力を向上させる魔法なのだよ。
だから軽い傷ならふさがり傷跡も消えるが、深いキズなら跡は残る。だからセルフヒールやヒー
ル、ハイヒールの類いは切断された腕などはくっ付けられない。そこまでのダメージはグレー
ターヒール以上の魔法でないと治療は無理だ」


「要するに……?」


「潰れた玉はグレーターヒール以上でないと治せない」


「じゃあ、俺の玉は……?」


俺は地面を拳で叩いた。


「畜生、ならばあとでスカル姉さんにグレーターヒールで治してもらおう!」


アマデウスが他人事のように素っ気なく言う。


「それは、もう遅いぞ」


「えっ、なんで?」


俺は目を点にさせながら聞き直した。


「傷が塞がってるのに傷は治せないだろ。潰れて傷が治った片目は失明したままになるだろう
さ」


「えっ、マジで?」


潰れて治った玉は、潰れたままなのか……?


「当然の理論だと思うのだが」


「じゃあ俺は、一生片玉なのか!?」


「残念だが、そうなるな」


「ひでぇ!!!!」


これから結婚を控えた若者に、なんたる仕打ちだよ!!


スバルちゃんが報われないぞ!!


俺が悲劇に絶叫していると、アマデウスが光る拳を握り締める。


「まあ、そろそろお遊びも終わりにしたい。アスラン、第九から降りてもらうぞ」


アマデウスが前に跳ねた。


一歩の跳躍で俺の眼前に迫る。


「ふっ!!」


アマデウスのローキックが絶望にしゃがんでいる俺の頭部に放たれた。


「ざけんなっ!!!」


突如、俺の怒りが爆発した。


怒りは素早さを加速させる。


俺は俊敏な動きで腰のベルトからダガーを引き抜くと地面に突き立てる。


カンっと刃先が鳴った。


俺のダガーは第九の硬い脳天に阻まれ突き刺さらなかったが、アマデウスが繰りだしていたロー
キックの蹴り足が止まった。


「痛っ!?」


激痛を蹴り足から感じたアマデウスが片足で跳ねながら後退して行く。


そして、蹴り足の脹ら脛からは失血が流れていた。


「負傷だと!?」


アマデウスの足にはズボンを突き破り刺し傷ができていた。


「何故だっ!?」


俺は立ち上がるとアマデウスの足元にダガーを投げつける。


「投っ!!」


すると硬い床にダガーが跳ねるとアマデウスの太股が裂けて鮮血を飛ばした。


「なんだ、これは!?」


「影を切ることで本体を傷付けるマジックアイテムだよ!!」


【シャドーキラーダガー+1。影を攻撃することで生命体を傷付ける】


次に俺は異次元宝物庫から手槍を取り出した。


俺は手槍を両手で確り持つと腰の高さで構えながら切っ先をアマデウスに向ける。


「今度は手槍かっ」


「突くっ!!」


俺は槍先でアマデウスの顔面を狙った。


だが、アマデウスは上半身だけを反らして槍突きを回避する。


しかし、アマデウスの顔の横を過ぎた槍がクネクネと曲がりだしアマデウスの首に巻き付いた。


「ぐぐっ!?」


手槍がアマデウスの首を蛇のように締め上げる。


アマデウスが自分の首に巻き付いた手槍を外そうと両手を力ませた。


だが、外れない。


【スネークショートスピア+2。スピアが蛇のようにクネクネ動いて絡み付く。スピアの全長が
3メートル伸びる】


「絞め殺す程度じゃあ、済まさねえからな。何せ玉一つぶんの仇だっ!!」


「こ、このぐらい……!」


首に巻き付いた手槍が外せないと悟ったアマデウスが俺に殴りか勝ってきた。


だが、動きが鈍い。


足を傷つけられ、首を締められているのだ、当然だろう。


俺はアマデウスのパンチを躱しながら異次元宝物庫から次の武器を取り出した。


鉄球にイボイボが複数付いたメイスだ。


「おらっ!」


俺が鋼鉄のメイスを振るうとアマデウスは光る右掌でメイスを受け止めた。


「ふんっ、それっ!!」


俺はメイスを防がれても続けて攻撃を繰り返した。


アマデウスは首に巻き付いたショーとスピアと両足に受けたダガーの傷のために回避が衰えて
いる。


故に回避出来ずに光る手で防御に専念していた。


両手両足を駆使してメイスの打撃を受け流す。


「そりゃ、うらっ、どらっ!!」


連続で振られるメイスの攻撃。


その強打をアマデウスは光る手や肘で受け流しながら叫んだ。


「武道防御術、廻し受けだっ!!」


「躱せなくても受け流せるってかっ!?」


「いかにもっ!!」


「じゃあ、どこまで受け流せるかな!?」


俺は何度も攻撃を受け流されたが振るうメイスの連打を緩めなかった。


「スタミナの勝負でも挑むか!?」


「ちゃうわい!!」


ガンっと鈍い音が鳴った。


俺が振るったメイスをアマデウスが肘で打ち落とした際に響いた音だった。


その途端アマデウスの表情が苦痛に歪む。


「痛っ……!?」


「それっ!!」


「ぬぬっ!!」


今度の攻撃をアマデウスは両掌を重ねて受け止めた。


メイスの先がアマデウスの両掌に止められる。


だが、その衝撃にアマデウスの身体が大きく仰け反った。


「なんだ、この衝撃は……!?」


俺は怪しく微笑みながら言ってやった。


「どうだい、そろそろ効き始めたか?」


「これは……」


アマデウスは痺れる掌を見ながら述べた。


「威力が徐々にアップしているのか……?」


「正解だ。そんな不思議なマジックアイテムですわんっ!」


【オーガラージメイス+3。攻撃力の向上。装備者のみ、この金棒の重量軽減効果。連続で同じ
目標に攻撃をヒットさせると、攻撃力が上昇し続ける】


「受け流しもヒットの内みたいだな。直ぐに受け流すのも不可能なぐら威力が上昇していくぜ
!」


「小賢しいマジックアイテムを……」


「てな訳で、どんどん行くぜ、アマデウスさんよ!!」


「ぐぬっ……」


俺のメイス乱打を受け流すアマデウスだったが、時折メイスが硬いところに当たるのか、その
度に表情を鈍く歪めていた。


「もう、だいぶ辛いんじゃあねえか!?」


俺の逆袈裟掛けに振るったメイスの先をアマデウスが片膝を立てて防いだ時である。


ドガっと重い音が轟いた。


「ぐぬっ!!!」


アマデウスが今までにない表情で歯を食い縛っていた。


効いているぞ。


間違いない。


俺が更に追い詰める。


メイスでアマデウスの顔面を狙う。


その瞬間にアマデウスが魔法を唱えた。


「魔法、ウルトラフルメタルボディー!!」


メイスが顔面にヒット。


ヒットしたが……。


グワァ~~ンっと釣り鐘でも叩いたかのような鋼の音が轟く。


アマデウスの全身が瞬時に鋼鉄に変化していた。


「この野郎、またその魔法かよ!!」


むきになった俺がメイスで鋼鉄化したアマデウスを乱打した。


ガンガンガンガンっと音が鳴り響く。


だが、たぶん効いてないだろう。


完璧防御なんだもの……。


「きぃーー、 ムカつく!!」




【つづく】
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