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ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

第193話【残酷な真実】

よしよし、まあ結果的にメガロ・ガイストの亡霊は討伐できた。


レベルアップもしたし、すべては結果オーライである。


それにしても……。


「糞爺……、何しとん……?」


俺は女装しているダグラス・ウィンチェスターに問うた。


金髪ロン毛のカツラに怪物のようなメイク。


それにスケスケのネグリジェのしたにはブラとパンティーを身に付けている。


その成りは糞爺を通り越して怪物糞爺だ。


もう、全身凶器状態のビジュアルである。


そりゃあメガロの霊も呆然としながら殺られてしまうわな。


あれじゃあ強制成仏もされなかったかも知れないぞ。


迷わず天国に行けていたらいいのだが──。


まあ、亡霊になって彷徨うぐらいだから、最初っから天国なんて無理だろう。


それよりも今は糞爺のダグラスだ。


なんで凶悪な女装をしながら寝ていやがったんだ。


そしてダグラスが理由を述べる。


「ああ、この格好か……」


ダグラスは化粧で白く塗られた顔を俯かせながら答えた。


恥ずかしがっているのかな?


「想い人が、このほうが可愛いって言ってくれたんじゃ……。ぽっ」


何が「ぽっ」だ!!


この糞爺はいい歳して何を照れていやがる!!


超キモチ悪いんだよ!!


俺もメガロも、おもいっきり吐いたじゃあねえか!!


もうゲロゲロですよ!!


てか、この成りが可愛いって言ったのはメトロ・ガイストだよね!!


あのアホオヤジの目は腐ってやがるな!!


目だけゾンビ化してるだろ!!


まあ、いいか……。


おかげでメガロに勝てたんだ。


ここは勘弁してやるか。


何よりメガロ討伐があっけなく終わったんだ。良しとしよう。


「よ~し、メガロも討伐できたんだ。どこか静かな場所でゆっくり眠るかな」


「ならばワシのベッドで一緒に寝るか?」


俺はVの字で目潰しをダグラスに喰らわす。


「ぎぃぃぁああああ!!」


ダグラスが両目を押さえながらのたうち回った。


そもそも今回の事件の発端は、こいつが魔法使いの塔を適当に作って倒壊させたから悪いんだ。


この糞爺は反省しているのだろうか?


まあ、そこまで俺が関与する問題でもないか。


俺はジャンヌちゃんに問う。


「ジャンヌちゃんは、これからどうする?」


ジャンヌちゃんは、弱ったジルドレを抱えながら言う。


「私は一旦お家に帰ってジルドレを看病します。この子は精力を吸われてますからヒールで回
復が不可能ですので、ゆっくり寝かせてやらないとならないでしょうから」


「ああ、なるほどね……」


しゃあないか。


ちょっと残念である。


まあ、しばしの別れだ。


明日の朝にまた会えるだろう。


そして、一緒に旅立たないかと誘うつもりだ。


家のしきたりに囚われず冒険者らしく冒険に出ようと誘うんだ。


そこから距離を少しずつ縮めていずれは──。


そう、結婚まで進むんだ!!


そして春に成ると庭先に色鮮やかな花が咲き誇る小さな家で一緒に暮らすんだ。


子供は男の子と女の子が二人居て、楽しく和やかに家族団欒の家庭を築いて暮らすんだもん。


絶対に幸せになれるぞ!


俺とジャンヌちゃんとなら暖かい家庭が作れるはずだ!!


そんな妄想を俺が繰り広げていると、ジャンヌちゃんがとんでもないことを述べた。


「では、私はお家に帰りますね。明日はソドムタウンから夫が帰ってくるので」


はぁ?


え~と?


今さ、何かジャンヌちゃんがとんでもないことを述べた気がしますが……。


気のせいだよね??


いや、念のために、もう一回だけ訊き直して見ましょうか……。


「ジャ、ジャンヌちゃん、今さ、なんていいました?」


「はい?」


ジャンヌちゃんは不思議そうに首を傾げた。


いやいや、俺は質問してるだけだから、反芻してくださいよ。


「だ、だからさ。今さ、なんて言ったの?」


ジャンヌちゃんは不思議そうな顔で述べた。


「私は一旦お家に帰るって言いましたが?」


「いや、そのあとだよ……」


「ジルドレを看病しますが?」


「いやいや、そのあとだよ」


「この子は精力を吸われてますからヒールで回復が不可能ですので、ゆっくり寝かせます。─
─ですかね?」


「いやいや、もっとあとだよ!?」


「え~~と、明日はソドムタウンから夫が帰ってくるんで、お家に帰りますね。──ですかね
?」


「そうそう、それそれ……」


「それが何か?」


「どう言うこと?」


「どうと、言いますと?」


「だからソドムタウンから夫が帰って来るって?」


「あー、そこですか~」


ジャンヌちゃんは満面の笑みで返した。


「夫は魔法使いギルドに勤めてまして、出張でソドムタウンに行ってたんですよ。それで明日
になるとソドムタウンから帰って来るんです」


いやいやいやいや、出張とかどうでもいいよ。


問題点は何故に夫が居るのだ?


もしかしてオットーって名前の身内なのかな?


そんなわけないよね!?


夫って言ったら亭主だよね。


なに、ジャンヌちゃんはこの歳でもう結婚しているんですか!?


それが信じられないわ!!


いやいや、絶対に俺の聞き間違いだわ。


これは訊いて真相を確認しなければなるまい!!


「ジャンヌちゃん、結婚してるの?」


「はい、新婚です♡」


うわー、元気良く答えやがったよ!!


しかも新婚で、語尾にハートマークが咲いてやがるわ。


なに、この真実は??


って、ことは……。


今まで盛り上がっていたのは俺の妄想ですか?


俺一人で盛り上がってましたか??


途方もない勘違いですか??


悪いのは俺ですか??


「どうした若いの? 顔色が悪いぞ?」


俺はダグラスに問われて答えた。


「いや、ちょっと真実が残酷過ぎて絶望してるだけだ……」


「そんなにワシの女装に絶望しているのか?」


「うん、それもかなりの絶望レベルだけどな……」


そのあとダグラスは寝室に戻り、ジャンヌちゃんは家に帰ると言って去って行った。


俺は廊下に立ったまま絶望に暮れていた。


何もするきが起きない。


やる気も寝る気も湧かない。


ただただ、呆然と立ち尽くしていた。


そして、朝が来るまで廊下で立っていた。


明日はメトロ・ガイストから報酬を貰って、一旦ソドムタウンに帰ろうと思う。


それからしばらくスカル姉さんの空き地で心の傷を癒そうと考えた。


ジルドレ同様に、この傷はヒールで治らないのだから……。


たまにはゆっくり休もう。


そう、俺は働き過ぎだ。


そう、働き過ぎなんだ。


勘違いするほどに働き過ぎなんだ。


兎に角、休もう……。


それがいい……。




【つづく】
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