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ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

第46話【鷹の眼の男】

鷹のような鋭い瞳で、ヤツは俺を見ていた。


手にしていた魔法使いの杖をテーブルに立て掛ける。


ヤツはリラックスした姿勢で椅子に腰かけていた。


年齢は30歳ぐらいだろうか。


もしかしたら、もう少し若いかもしれない。


座って居るから確かな身長は分からないが、俺よりは背が高いと思われる。


全体的に痩せてはいるが、芯が確りとした姿勢であった。


おそらくローブの下の体型は、細いが減量中のボクサーのように引き締まっているだろう。


ガリガリマッチョマンだ。


だから押しても引いても動かなそうな芯の強さを感じられるのだろう。


何より存在感を露にしているのは、やはり鋭い眼光だ。


まさに鷹だ。


そして、黒髪は肩まで長く、ソバージュが掛かっている。


頬は痩けているが鉄筋の頭蓋骨を有しているようだった。


堀が深く眉毛が薄いのも強面を引き立たせている。


一目で見た印象は、凄腕の冒険者だと察せられるが、善人には見えなかった。


だが、完全な極悪人にも見えない。


兎に角、存在感だけは異常なレベルだ。


そして、魔法使いの男が口を開く。


「済まなかったな、キミ。我々のパーティーメンバーが迷惑を掛けた」


「い、いえ……」


押されているな。こいつの威圧感に……。


ただそこに居るだけで大きなプレッシャーを掛けられている。


「キミを知っているぞ」


「おれを?」


「ウルブズトレイン事件の犯人だろう?」


「知ってるのか」


「もう、有名な話だ。結構な大騒ぎだったと聞く。それに昨晩の火災にも噛んでいるとか?」


はや!


この人、情報を仕入れるのが早くね!?


俺は言い訳を述べる。


「噛んでいるといいますか、噛まれているといいますか、甘噛み状態だったといいますか、そ
の日に部屋を借りて入居する直前だっただけですよ」


「なんだ、てっきりキミが付け火の犯人かと思っていたぞ」


「そんな怖いことしませんよ、俺は」


えーー……。


巷だとそんな噂が立ってるの~。


いゃ~ん、濡れ衣もいいところだよ。


てか、町での俺のイメージって悪いのかな?


だとしたらショックだわ~。


そりゃあ、ゴリラにも絡まれるよね。


「ところでどうだいキミ。私のパーティーに入らないか?」


「パーティー募集中ですか?」


「何せ丁度良いタイミングで斧戦士が欠番になったのでな。戦士クラスを募集し直そうかと考
えていたところだ」


あんたが魔法でゴリラを寝かし付けたんじゃないか。良く言うよ。


てか、スリープクラウドってさ。範囲魔法だったよね。


ピンポイントで一人を寝かせる魔法じゃあないよね?


集団を眠らせる範囲魔法だよね。


それなのに何故?


この人は、どうやったの?


「ほほぅ。キミはさっきのスリープクラウドを不思議がってるな?」


「ぬっ!?」


心を読まれたぞ!?


この人はエスパーか!?


ファンタジーの魔法使いじゃなくて、SFのエスパーかよ!!


そうなると作風が変わってくるぞ!


もしかしてこれから異能者バトルの展開なのか!


いや、心を読まれているとなると、かなりの心理戦を含んだ熱いバトルになりそうだ!


ならば、まさに、驚愕の新展開が勃発だぜ!!


「驚くほどのことじゃあない。ただ魔法を強化して効果範囲を広げるのと真逆のことをやった
だけだ」


「真逆?」


「そう、魔法の効果を弱らせて、小さくしただけだ」


サラリと簡単に言ってるけどさ、普通はそんなの出来ないよね。


もしかして、この人は魔法の天才なの?


ふざけたぐらいの高レベルな魔法使いなの?


とりあえず、こいつの名前が知りたいな。


ならば若輩者の俺から名乗るのが筋か──。


「遅くなりましたが、俺の名前はアスラン。あなたの名前は?」


「魔法使いのアマデウスだ」


うむ、また何処かで聞いたことがある名前だな。


誰だっけな?


なんか音楽の時間に聞いたような、聞かなかったような……。


まあ、いいか。


「で、先程の返答は如何に?」


「パーティーの誘いですか?」


「当然だ」


「お断りします」


ギラリッ!


ひっ!


断った瞬間に鋭い眼光が、更に殺伐と鋭利に光ったよ!!


怖かったよ!


怒ったかな!?


不味かったかな!?


「ほほぅ、断るか、何故かね?」


「だってあんたさ、ヤバそうだもの」


だろー。ヤバそうだろー。


この人さー、近寄ったら良くない人物じゃんかー。


そりゃー、断るよねー。


「ふぅ、ハッキリとした若者だな。振られるとは、実に残念だ」


今まで見守っていたクラウドが俺に小声で耳打ちをして来る。


「いいのかよ、アスランくん……」


「なにが?」


「アマデウスさんは、次のギルドマスター候補だぞ」


「えっ、マジ?」


それが本当ならば、俺、マズったかな?


椅子から立ち上がったアマデウスが言う。


「まあ、いいさ。今回は駄目でも、次の依頼でパーティーを組む機会だって来るやも知れない
からな」


そう言って貰えると助かりますわ
~。


大人の対応有り難う。


「じゃあクラウドくん。明日の朝から出発だ。悪いがこいつの面倒を頼めるか。こいつとキミ
とで、戦闘時はツートップで頑張ってもらうのだからな。今のうちに親睦を深めておくといい
ぞ」


杖を手に取ったアマデウスが、杖先でゴリラを指しながら冷たく言った。


「分かりました、アマデウス先輩!」


シャキッと背筋を伸ばしてクラウドが敬礼をする。


俺には完全に犬に見えた。忠犬だ。


長い物にはぐるぐる巻きになるワン子だな、本当に。


こいつは出世するかもしれないぞ。


いや、無理かな。


そのあとアマデウスは冒険者ギルドを出て行った。


俺も二階に移動する。


何だろう。他の冒険者の視線が冷たいな。


こそこそと話しているしさ。


まあ、気にしないで置こう。


そのあとに俺は、二階の掲示板を眺めた。


全部パーティーメンバーの募集しかない。


依頼書はすべて先にパーティーを募集しているヤツらに取られたようだ。


仕方ないのでパーティー募集の紙を見てから一階の酒場に戻る。


ここのパーティー募集にも仕組みがあるのだ。


パーティー募集の紙には依頼内容と報酬の他に、どのクラスを募集しているかが書いてある。


それとテーブル番号だ。


あとからパーティーに加わりたい冒険者が上の階で募集のテーブル番号を見て、一階の酒場の
番号席に行ってからパーティーにくわえてもらえるかを交渉するのだ。


要するに下の酒場は、パーティーが揃うまでの待ち合い席の役目も果たしているのだ。


そして俺が募集を見て、パーティーに加わりたいと述べるが、すべてのパーティーに断られた。


条件が合う募集が6パーティーも有ったのにだ。


えぇ~~と、イジメかな?


仲間外れのイジメですか?


なんで、イジメられるの俺が?


無視されてますか、俺?


でも、心当たりが幾つかあるな……。


多分、一番の理由はアマデウスの誘いを断ったからだろうな。


だって、次のギルマス候補だろ。


権力ありそうだもんね。


こりゃあ、マズッたかな。マジで──。


でもさ~、あいつ重くね?


この作品はスナック菓子を食べている感覚でサクサク話が進んで行く軽い軽い作風が売りじゃ
あないの?


あんなマジなキャラが登場してもいいのかな。


大体さ、ヤツが出てきてから俺がムリクリに茶化していたから、何とかお笑い的に精神を繋ぎ
止めていた感が強くね?


でしょー。


ならば隙見て早めに潰しちゃおうかな。


あいつが潰れてもさ、誰も文句なんて言わんだろ。


絶対にあいつさ、周りにも嫌われているよ。


よし、潰すぞ!


そしてホチャラカした軽いストーリーを取り返してやるぜ!


まずはあいつのローブに、後ろからウ◯コを投げつけてやるぞ!




【つづく】
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