• TOP
  • しおりを挟む
  • 作品推薦
  • お気に入り登録
ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。

第447話【長槍のパンナコッタ】

俺はティラミスを鞘に納めると、肩に担いで三の間を出た。


ティラミスの甲冑はキャッサバたちに回収してもらい異次元宝物庫で管理させている。


斬られた両手首は二日もすればくっつくらしい。


流石はかなりのレア物だ。


マジックアイテムとして修復力も極まっているようだな。


俺に背負われたティラミスが言う。


「三の間を出て100メートルほど進めば四の間がある。そこに皆が待っているはずだ」


俺は足を進めながらティラミスに確認した。


「本当にお前らハイランダーズは俺の仲間になるんだろうな?」


「分からん……」


サラリと言いやがった。


「分からんってなんだよ!」


「私がその気でも部下たちがどう動くかが分からん。何せ私が謀反を起こした時に、スターチ
やプディングたちは、私にはついてこずに、タピオカ姫について行ったからな……」


「ハイランダーズも一枚岩じゃあないってことか~」


「それに、四の間に残って居るのがパンナコッタだ。あやつは少し前から私の遣り方に納得い
かずに苦言を呈していたからな」


「長槍のパンナコッタだっけ?」


「聞いておるか?」


「名前だけは──」


「あやつは私と違いインテリだ。軍を率いる私と違い、政治をやりたいのだ。そして、その効
率的な思考を支持するハイランダーズも少なくない」


「本当に一枚岩どころじゃあねえな。三枚岩かよ」


ハイランダーズにはタピオカ姫派とティラミス派のほかに、パンナコッタ派が居るってことか
い。


しかもティラミスは武力だけで仲間を率いていたんだ。


その力が力に打ち破られたと知れば、他の連中がパンナコッタ派に流れるのは見え見えだな。


これは四の間でパンナコッタと、もうひともめ有りそうだぜ。


少なくとも話はすんなり進まんだろうな。


「んんっ?」


俺が通路を進んでいると先の暗闇から人影が近付いて来る。


人影は一人だ。


カチャリカチャリと音が聴こえる。


フルプレートの音だ。


人影はハイランダーズが一人。


ティラミスが言う。


「キャラメル師範……」


「あ~、あの爺さんか」


「ティラミス様……」


キャラメルは俺たちの前で片膝をついて頭を下げた。


どうやらこいつはティラミス派のようだ。


しかし、一人か……。


キャラメルが言う。


「失礼でありますが、ティラミス様の敗北を一早く報告して参りました」


「構わん、報告を指示したのは私だからな……」


「それと、ティラミス様がアスラン殿と戦う前に結んだ契約内容も報告してあります……」


「他の者たちは、なんと?」


「私以外は、すべての者が拒否しました」


「そうか、お前だけか……」


「はい……」


「ティラミス、お前は思ったより人望が無いな~」


言いながら俺は肩に担いでいたティラミスをキャラメルのほうに投げた。


キャラメルがティラミスを受け止める。


「じゃあ忠義な家来なら、お前が家臣殿を持ちやがれ」


「御意」


「とりあえずたちな。頭の位置が低いと話ずらいんだよ」


「御意」


キャラメルは反論もせずに素直に立ち上がった。


俺は臭い表情を作りながらキャラメルに問う。


「でぇ~。残りのハイランダーズは、俺と敵対すると?」


「それなのですが、ほとんどの者たちは、アスラン殿とパンナコッタ殿の対決を望んでおられ
ます」


「えっ、勝ったほうにつくのか?」


「はい」


それじゃあティラミスの時と同じじゃあねえかよ。


マジで二度手間だぜ。


しかも剣技戦力ならばティラミスが圧倒だろう。


なのに今さらナンバーツーと戦ってなんになるってんだ。


「まあ、分かった。兎に角四の間まで言って、本人とちゃんと話合おうや」


「御意」


俺はティラミスを担いでいたキャラメルを連れて先を急いだ。


それにしても──。


パンナコッタは知能派だろう。


ならば武力で優れたティラミスとは違う手段で挑んで来るはずだ。


ただ単純に長槍を振り廻して挑んでこないだろう。


何か企んでいるのは間違いない。


そしてしばらく歩くと目的地に到着した。


「こちらが、四の間です──」


「サンキュー」


どうやら最終地点に到着した。


部屋の中に足を進めると両壁際に黒甲冑のハイランダーズが並んで立っていた。


正面には石の玉座がある。


だが、石の玉座は空だ。


俺は天下を取った気分でパンナコッタがふんずりかえって居るかと思っていたが、その本人が
居ないのだ。


「おい──」


俺は背後に立つキャラメルに声を掛ける。


「パンナコッタって奴はどこだ?」


「いま、お召し替え中かと……」


「お召し替え?」


なんじゃいそれ?


「なに、ドレスにでも着替えているのか。パンナコッタって女なのかよ?」


「違いますぞ。パンナコッタ殿が作った戦闘用甲冑に着替えているのだと思います」


「戦闘用甲冑だと?」


なんだか面白い物が出てきそうだな。


やっぱり何か作戦を立ててやがる。


すると──。


ドシンっ!!!


「えっ、地鳴り?」


ドシンっ!!!


地鳴りだ。


どこからだ?


ドシンっ!!!


「み、みんな。退避しろ!!」


壁際に立っていたハイランダーズが慌てて逃げ出した。


俺たちが入ってきた通路から出て行く。


慌てるキャラメルが言う。


「アスラン殿。あとは二人で楽しんでくだされ。決着が付きましたら、またお会いしましょう
ぞ!!」


そう述べるとキャラメルはティラミスを背負って逃げて行く。


ドシンっ!!!


さてさて、何が出てきやがる!?


ドゴーーーーーン!!!!


突如正面の壁が吹き飛んだ。


崩れた壁が石の玉座を薙ぎ倒す。


「うわ~、でか~……」


崩れた壁の向こうで巨大な影が揺れていた。


体長15メートルほどだろうか。


太い胴体に太い脚が二本。


手は小さいが、首が長い。


背中には大きな翼を持っている。


その身体はメタリックな金属せい。


まるで甲冑を纏ったドラゴンだ。


いや、見たまんまドラゴンだ。


「ド、ドラゴン……」


ドラゴンの中から男性の声が聞こえて来た。


おそらくパンナコッタだろう。


「これは我らがハイランダーズの最終兵器アーティファクトドラゴン。下のエリアのクラーケ
ンが攻めてきたさいの秘密兵器だ!!」




【つづく】
  • TOP
  • しおりを挟む
  • 作品推薦
  • お気に入り登録