「はぁ~い、皆さんは夕飯を食べながらでいいですから俺の話を聞いててくださいね~」
俺は焚き火の前で食事を取っているスカル姉さん、バイマン、ゴリ、それに三匹の狼に説明を
開始する。
俺がこれから行おうとしているビッグプロジェクトの全貌を、彼ら三人と三匹に説明しようと
していた。
しかし──。
「では、まずですね~」
「はいっ!」
いきなりゴリが手を上げた。
なんだよこいつは、開幕から何が言いたいんだ?
まあ、仕方無いか、話を聞いてやるよ。
「何かね、ゴリくん?」
「俺の飯だけ、用意されてないんですが?」
「はぁ~?」
スカル姉さんとバイマンは、俺が買ってきた鶏肉をコーンスープにぶち込んだだけのスープを
おかずにパンを食べているが、ゴリの分だけ用意されていない。
狼たちですら鶏肉をガブガブと骨ごと食べているのにだ。
俺は溜め息を吐いてから答えた。
「だってお前は、さっき串焼き三本を食べたじゃん」
「あれでは足りません。だって俺は身体がデカイもの!!」
「分かりました。では、パンの数は無いので、スープだけを飲んで構いませんよ」
「ありがとうございます!!」
これで静かになるだろう。
よし、それじゃあ夢のロマンス計画を説明するぞ。
「はい、では、説明に戻りますね~」
「あのー!?」
またゴリが手を上げた。
なんだよ、このゴリラ顔野郎はさ!
まあ、冷静に聞いてやろうか……。
「何かね、ゴリくん?」
「器が無いんですが~……」
器かよ!!
今度は器ですか!!
俺はスカル姉さんに訊いた。
「スカル姉さん、器の余りは無いか?」
「ない」
「だ、そうな。では、説明を始めますよ~」
「いやいや、ちょっと待ってくれよ。俺だって腹が減ってるんだ。飯を食わせてくれよ!」
何を言ってやがる、この糞ゴリラ。
いま器が無いって言われただろうが。
しゃあないな。
かくなる上は──。
「分かった、ゴリくん。それじゃあ、器が無いから、両手を出してごらん。そこに激熱コーン
スープ(鶏肉入り)を注いであげるから、好きなだけ頂きなさい」
「いやいやいや、無理!」
「なんで?」
「なんでじゃあ無いよ。お前は出来るのかよ!?」
んー、出来るかな?
試して見るか。
俺は両手を合わせて素手の器を作った。
「スカル姉さん、さあ、注いでくれ!!」
「はいよー」
スカル姉さんは、容赦無く俺の手の中に激熱コーンスープ(鶏肉入り)を注いだ。
あーーつ!!!
でも、熱くない熱くない!!
「熱くなーーい、こんなの熱くなーーい!!」
「いやいや、絶対に熱いだろ!!」
俺はマジックアイテムで耐火向上が二つ付いているから耐えられるんだ。
もしもマジックアイテムの効果が無ければ、間違い無く耐えられないだろう。
そして俺は手の中の激熱コーンスープ(鶏肉入り)を一気に飲み干した。
「ずずずずずず~~!」
「飲んでる! 激熱コーンスープ(鶏肉入り)を一気飲みしてやがる!!」
「ふぅ~~」
かなり来たぜ~。
危うく「熱い!」とか叫んじゃうかと思ったもの。
でも、これで試練は越えたぜ。
「はーい、じゃあ次はゴリくん、両手を出してくださ~い」
「うぅぅ……」
ゴリは恐る恐る両手を差し出す。
そこにスカル姉さんが激熱コーンスープ(鶏肉入り)を注いだ。
「行くぞ~」
ドボドボドボ……。
「ぁぁああちいいいいぃいぃい!!!」
ゴリは手に注がれた激熱コーンスープ(鶏肉入り)を放り投げて騒ぎ立てる。
その投げた激熱コーンスープ(鶏肉入り)が、スカル姉さんやバイマンの顔にかかって大騒ぎと
なった。
現場が瞬時に修羅場と化す。
もう、説明会どころの話ではなくなっていた。
でも、面白いからいいかな。
そして、しばらくして現場が落ち着きを取り戻した。
「はぁ~い、それじゃあ今度こそちゃんと説明するよ~」
「「「はぁ~い」」」
三人が揃って返事をした。
「俺の今回の計画は、秘密基地として村を作ろうと考えております!」
俺がビシッと言うと、スカル姉さんが呆れたように言う。
「何を言い出すかと思ったら、お前は馬鹿か?」
「えっ……」
「今、私に必要なのは家だ。その家すら無いのに、何が村だ!」
「あー、それね~」
俺は澄まし顔で述べる。
「まずここに家は建てるよ」
「お金は?」
「俺がどうにかする」
「私に貸すってことか?」
「ああ、無利子で貸してやる。ただし、利子の代わりに別の条件を飲んで貰うがな」
俺が怪しく微笑みながら言うと、スカル姉さんは稲妻に打たれたかのような表情で言った。
「私の身体が目的だな!!」
「そんなわけないだろ、ペチャパイ」
「キィィーーー!!」
スカル姉さんが俺に飛び掛かった。
「なんだと、この糞ガキが! 貧乳を舐めんなよ!!」
「うるせぇ! 俺は大きいほうが好きなんだよ!!」
「このー、貴様に貧乳の魅力を伝授してやるから、吸え!!」
「吸うか、このペチャパイ!!」
「まあまあ、二人とも落ちついて……」
バイマンとゴリが俺とスカル姉さんの間に割って入る。
「この決着は、いつか付けてやるからな、ぺっ!」
「うわ、汚いな! 唾を飛ばすなや、スカル姉さん!!」
「おいおい、二人とも暴れるな!」
バイマンとゴリの二人が必死に止めて喧嘩は収まる。
そして話は計画説明に戻った。
「まあ、お金は俺が出す。今の貯金は70000Gぐらいあるからな」
スカル姉さんが口元を曲げながら言う。
「それだと小さな家は建つが、前の三階建ての規模は、到底無理かな……」
「まあ、そこで、別の場所に村を作るんだよ」
またスカル姉さんが呆れながら言う。
「さっきっから言っている、その村ってのが分からんのだよ?」
バイマンとゴリが「そうですよね~」と頷いていた。
俺は異次元宝物庫から転送絨毯を出して広げた。
三人が異次元宝物庫を見て驚いていたが、それを無視して俺は転送絨毯を地面に敷いた。
「まあ、これを見ていてくれ」
俺が言うがスカル姉さんが割って入る。
「それより今のはなんだ!?」
「ああ、異次元宝物庫だ。だいぶ前にドラゴンから貰ったんだ」
「ドラゴン……?」
「それより、これを見ていてくれ」
俺は転送絨毯の上に立った。
合言葉を口に出す。
「チ◯コ!」
「「「!!??」」」
「どう、驚いた~」
目の前の絨毯上から転送された俺が、テントの中から出て来て三人は驚いていた。
「どうなってるんだ、アスラン!?」
俺はテントの中から、もう一枚の転送絨毯を持ち出して並べる。
「この二枚の絨毯は、転送絨毯って言って、二枚が転送式で繋がってるんだ」
俺は絨毯の上で「チ◯コ」と言って見せた。
すると隣の絨毯上に瞬間移動する。
「テレポートなのか……」
「そうそう、それだよ」
俺は絨毯上で「チ◯コ、チ◯コ」と連続で合言葉を言った。
俺が二枚の絨毯上を交互にテレポートする。
そして調子に乗った俺は合言葉を連呼する。
「チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ!」
スパパパパパっと絨毯の上を俺が残影を写して転送しまくった。
「どうだ、面白いだ……、オエっ!!」
唐突に俺は吐いた。
連続でのテレポートは身体に負担が掛かるらしい。
すげー、気持ち悪いわぁ……。
「大丈夫ですか、アスランさん……」
バイマンが俺を気遣い背中を擦ってくれた。少し落ち着く。
「あ、ありがとう、カイマン。もう大丈夫だ……」
「バイマンです……」
俺は深呼吸したあとに三人に言った。
「まあ、これで、ここと別の場所を繋ぐってわけよ」
「なるほどね~」
スカル姉さんは少し考えたあとに答える。
「分かった。そのプロジェクト、乗ろうじゃあないか」
「流石はスカル姉さんだ。話が分かるな」
そこでゴリが言う。
「それで、俺たちには、どうしろと?」
「俺が繋いだ先で、村人になって、土地を管理してもらいたい」
「管理職か……」
「まあ、難しく考えるな。そもそも成功するかはまだ分からない話なんだからさ」
スカル姉さんが、新たな疑問を問う。
「ところで何処に村を作るんだ?」
「秘密基地っぽい村だからな。場所の候補は、ちゃんと考えてあるんだ」
俺は異次元宝物庫から、買ったばかりの地図を広げて見せた。
そして、一点を指差す。
「候補地は、旧魔王城跡地だ!」
【つづく】