プリッ、プリッ、プリッ……。
「おはようございま~す」
「やあ、アスランくん。おはよう」
プリッ、プリッ、プリッ……。
俺が目を覚まして一階に降りて行くと、パーカーさんがテーブル席でコーヒーを飲んでいた。
部屋の中にはコーヒーの良い匂いが漂っている。
プリッ、プリッ、プリッ……。
「キミも飲むかい、コーヒーを?」
「ええ、頂きます」
プリッ、プリッ、プリッ……。
俺が眠気眼でコーヒーを啜っていると、厨房からパーカーさんが食器を運んで来た。
皿の上には目玉焼きが置かれている。
プリッ、プリッ、プリッ……。
「やあ、アスランくん。昨日は良く眠れたか~い。ほら、朝御飯だよ~。食べるだろ~?」
「有り難うございます。ピーターさん」
プリッ、プリッ、プリッ……。
俺たち三人は、こうして朝食を頂いた。
目玉焼きとパン。それにコーヒー。
なんともモーニングで簡単な朝食である。
プリッ、プリッ、プリッ……。
「ところで、アスランくん。本当に今日からダンジョンに入るのかね?」
「ええ、入りますとも」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「マジでかい。本当に冒険者ってヤツは怖いもの知らずだね~」
「だなぁ。俺だったら命令でも断るぜ」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「まあ、仕事ですからね。それと俺がダンジョンに入っている間は、鉄扉を閉めないでくださ
いな。いつでもダッシュで避難できるようにさ」
「ああ、分かっている。どうせモンスターも上がって来ないから問題無いだろう」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「二人とも、良かったら俺とダンジョンに入りませんか?」
「冗談はやめてくれよ」
「そうそう、僕たちは死にたくないからね~」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「…………」
「…………」
「…………」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「ところでさ?」
「なんですか、パーカーさん?」
「この屁は誰がこいているんだ?」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「俺です。アスランの屁です……。俺のお尻が緩みきっています……」
「やっぱりそうか……」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「え、なに。キミは病気なのか?」
「ええっ!? 俺、病気なの!?」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「これだけ屁が止まらないと病気だろ」
「僕もそう思いますよ~」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「ちょっと二人とも! 逃げないでくださいな!!」
「そりゃあ、逃げるだろ。移されたら堪らんからな……」
「あれ?」
「どうした、アスランくん?」
「屁が止まったぞ!」
「本当だ。ガス漏れ音が聞こえなくなったぞ!」
「やったーーー!!」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「「あれ……」」
「アスランくん、また出始めたのか?」
「俺じゃあないですよ?」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「パーカー、アスランくん。僕だよ………」
「「!?」」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「今度は僕のお尻が緩みだしたよ……」
「何故にアスランくんの屁がピーターに移るんだよ!?」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「知らないよ。僕だって初めてさ!!」
「とりあえず俺に近付くな!」
「なんでだよ!?」
「移ったらたまらんだろ!!」
「移るわけないだろ!!」
「ちょっと待て……」
「屁が止まってないか?」
「と、止まっているな?」
「止まっているね……」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「いや、またガス漏れ再開だ!!」
「誰だ、今度は!?」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「アスランくんですか?」
「俺は大丈夫だ。ピーターさんじゃあね?」
「ぼ、僕は大丈夫だよ……」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「俺だわ~。ガス漏れしてるの俺だわ~!」
「「パーカーさん!!」」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「どうするパーカーさん、ピーターさん。とりあえずゆっくり落ち着いて考えよう!」
「そ、そうだな、アスランくん……」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「どうしてこの屁は伝染するんだい!?」
「知るか、ピーター!」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「落ち着けよ、パーカーさん。とりあえず俺はダンジョンに旅立つからさ、それからゆっくり
と考えてくれよ。じゃあ、ピーターさん、ダンジョンの鍵を開けてくれないか?」
「ああ、分かったよ。今開けるね」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「いやいやいや、ちょっと待てよ、お前ら!?」
「「なに?」」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「まずは屁をどうにかしないとさ!?」
「「なんで?」」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「いゃ~~、なんでとかじゃあないでしょうが。謎の伝染屁ですよ!」
「ほら、それはパーカーさんの屁だからね」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「そうそう、もうじきスパイダーが来たら僕も交代で帰るからさ。あとはスパイダーと考えて
よ」
「ちょっと待てやお前らな!」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「そもそもお前らから移った屁だぞ!」
「だが、今はキミのだ」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「畜生、こうなったら意地でも移してやるぞ!」
「うわ、ちょっと尻をぶつけて来るなよ、キモイ!!」
プリッ、プリッ、プリッ……。
「うーわ、止めてくれ~!!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「うわ、バッチイ!!」
「これで、どうだ!!」
「ひぃーーー!!!」
「「「あっ……」」」
「止まったな……?」
「止まりましたね?」
「パーカーさん、ピーターさん、本当に止まったの?」
「うん、止まってるよ……」
「おう、止まってるな!」
「「「よっしゃーー!!」」」
プリッ、プリッ、プリッ……。
プリッ、プリッ、プリッ……。
プリッ、プリッ、プリッ……。
「「「あーーーー……」」」
「またかよ……」
「またですな……」
「もしかして、全員が屁をしているのか?」
プリッ、プリッ、プリッ……。
プリッ、プリッ、プリッ……。
プリッ、プリッ、プリッ……。
「そのようだな」
「そうみたいです……」
「畜生……」
その時である。
もう一人の登場人物が現れた。
「ちぃーす、スパイダーの出勤でーす」
三人が尻から一斉に飛び掛かった。
「「「食らえ!!!」」」
「ぬぬぬーーーっ!!!」
出勤して来たばかりのスパイダーに、三人が揃ってヒップアタックを仕掛けたのであった。
【つづく】